国産材のエンジュは「延寿」としても親しまれ近年では希少な樹種です
エンジュ(イヌエンジュ・犬槐)は、落葉広葉樹の国産材です。北海道から四国、九州まで自生し、千島、朝鮮半島、台湾、中国に分布しますが、蓄積量の極めて少ない木材です。
樹皮は淡黒褐色で割れ目があります。辺心材の差ははっきりしていて、辺材は狭い黄白色、心材は暗褐色を呈し、老樹になると濃暗褐色になります。年輪は美しく、木肌が所々黒光りしているのが特徴的です。
材はやや重硬で、強く粘りがあります。心材は腐れや割れが入りにくく、加工はやや困難ですが、表面仕上げは良好で、磨くと光沢が出ます。
彫刻や細工物の他、古来より床柱や床框などの建築装飾材として珍重されてきました。強く粘りがあるため曲木にも適しており、手斧の柄や農具、車両部品、家具、薪炭など、生活に密着した道具類に加工される木材です。
日本では「延寿」の漢字が当てられ、病魔を払い寿命をのばす木として、古くから親しまれてきました。木材界では「エンジュ」として通っていますが、樹種としては「イヌエンジュ」であり、本来のエンジュは中国原産の別属の樹木です。流通量は少なく、イヌエンジュの床柱などは簡単に手に入らなくなっているため、近年ではシナノキ材を加工したイミテーションが多く出回っており、集成加工したものが生産されるようになりました。
写真出典:IPA「教育用画像素材集サイト」